住宅工事には、注文住宅やリフォーム、中古住宅のリノベーション、増築・改築など様々あります。
私たちは工事を依頼する際、例えどんなに小さな工事であっても必ず『見積書』を取り寄せるはず。
しかし見積書の内訳は、会社によって表現がバラバラで解読は難解。
見積書の表現が会社によって異なると、比較検討をする時になんか『モヤモヤ』しませんか?
それは、見積単価がどの様な仕組みで作られているのかを知れば、解消できる不安かも知れません。
この記事では住宅の工事費を記載する見積書において、各種明細項目に登場してくるその単価の仕組みについて詳しく解説しています。
この記事を読むことで、誰でも住宅工事の見積書を読み解くために必要な知識が得られ、ハウスメーカーや工務店とのやり取りもよりスムーズに、充実した家づくりの検討が始められます。
- 住宅会社は建設業である
- 建設業は請負契約を行なう
- 請負契約の見積単価は材料費と歩掛で構成される
住宅会社は建設業であり請負契約の書式に見合った「見積書」が必要!
概算見積に注意する
巷でよく耳にする「見積り無料」の類は、いわゆる「概算見積」の事を指しています。
何かしら目安となるものが無いと話が進まないので、とりあえず「ある程度」を組み込んだ工事費として算出されるのが、これら概算見積。
概算見積は文字通り概算なので、その後の打ち合わせによるプラン内容で金額がいくらでも上下します。
今回この記事で紹介するのは、家づくりも佳境に差し掛かる「契約に至る見積書」のお話。
法的行為である契約に差し支えの無い十分な内容の見積書は、いくら客商売の住宅会社とは言え、到底無料では作成する事が出来ません。
しかしながら無料の概算見積についても、家づくりにおける初期段階のステップとしては、施主側と住宅会社側の双方にとって有益な点も多いです。
概算見積は施主側の要望を整えていくため、打ち合わせの叩き台として用いる事で、同時に予算に対する意識を高めてくれます。
打ち合わせ用の概算見積と、契約用の見積書は違う。
請負契約(うけおい-けいやく)とは?
住宅工事は家電や食品のように商品を手に取ってみて、買うかどうかを決める事が出来る買い物ではありません。
住宅工事の契約は、まだ着手すらしていない、姿カタチの見えない建物に対して、大金をかけて注文が成立する人生最大の買い物です。
こう言った契約の取り交わし方を一般に「請負契約」と呼びます。
ハウスメーカーや工務店は、この請負契約をもって住宅建築に取り掛かり、完成引き渡しをもって請負が完了します。
その請負契約に必要となるのが「見積書」
見積書には、その工事を請け負う為に必要な項目と金額が記載されています。
尚、この見積書の段階においては、その見積金額は住宅会社のただの目論見であり、工事を完成させる為に必要な金額の「予定」でしかありません。
従って、見積金額の内側に設定された実行予算よりも安く材料を仕入れる事が出来たり、少ない人数の職人で工事が完了できれば儲ける事が出来ます。
反対に、実行予算よりも多くの材料や日数が必要となってしまった場合は、損する事になります。
俗に「請け負け」と呼ばれるもの。
請負契約とは注文住宅に限らず、建設業全般に共通している契約方式ですが、その見積書には市場の活況や資機材の調達状況、施工時期の気温・天気などの季節、社会情勢に至るまで、様々な要因を検討してやっとの思いでお客様へ提出するものです。
住宅会社は建設業であり、請負業である
見積金額の表記方法
見積金額は「数量×単価」で表記されます。
数量とは図面から拾い出した設計数量のことを指し、その数量には必ず共通の単位が存在します。
そして単価とは、材料代を計上した「A.材料単価」と、施工手間や歩掛(ぶがかり)を加味した「B.施工単価」を合わせた項目毎の原価総額を、該当する項目の設計数量で割り戻したものを、最小単位で表した形になります。
これらについて詳しく後述します。
請負契約における見積書では、原則的にこの「設計数量」と「単位」を用いて「単価」を算出。
見積の根拠には設計図があり、見積単価には設計数量を用いる
数量については図面から拾う事が出来ます。
設計図から拾った数量を設計数量と呼び、そしてこの作業を積算と呼んだりします。
設計数量の単位を知る
例えばリビングの壁紙クロス貼工の数量であれば、「壁面の高さ×壁面の長さ」で求めます。
サッシや窓などの開口部をどのように取り扱うかについては様々ありますが、0.5㎡未満の開口面積はマイナスにしない等、ルールを共通すれば誰が計算しても同じ数量になります。
この数量から成る物体の形状を出来形(できがた)と呼び、出来上がった形として共有。
共有する為には、出来形の単位については同じものを用いる必要があります。
分母や単位を揃えないと会話が成立しない。
見積を計算する人によって㎡(平米)やM(メーター)など単位は変わる事はありません。
先ほどの壁紙の例で言うと、単位は㎡(平米)です。
なぜなら室内の壁面の出来形は、誰がどうみても面積だから。
一方、例えば壁と床面の接点に取り付ける巾木(はばき)という部材については、単位はM(メーター)です。
一般的に出来形となる施工対象が長さだからです。
設計数量の「単位」は会社によって変わらない。
見積書には設計数量を用いる
問題は、この出来形による単位の原理原則を、自己都合で無視してくる業者もいるという点です。
先ほどの例で言うと壁紙の単位をM(メーター)で見積してきたりします。
これは材料の使い勝手を鑑みて業者側の独断で取り扱われる場合に多いです
施主にとっては、材料のリピート率や捨てる部分など知ったこっちゃない。
せっかく出来形に対して共通の数量と単位があるのに、独自理論で見積りを出されては比較検討が出来なくなります。
それはどうやら見た目の金額を細工する為に、使う材料(クロス材の長さ)などで計上している様なのですが、これでは工事中に材料不足で追加料金を迫られる事も心配されます。
通常は業者側の測り間違いでもない限り、作業中に突然、壁面積が増える事はありません。
数量と単位はセットになって初めて、見積書が見積として機能します。
設計数量や単位を使用しない会社には要注意!
住宅工事の見積書にある「見積単価」の求め方を知っておこう!
次に単価はどのように決められるのか、について説明します。
単価とは「原価+利益」の総額を、数量で割り戻したものです。
A.材料単価の算出
例えば、幅900㍉の壁紙クロス材を使用するとして、1メートルあたりの面積は「幅0.9×長さ1.0」で「0.9㎡」です。
対象となる室内の出来形の面積が100㎡であったとしたら、使うクロス材の長さは単純に「100㎡÷0.9㎡」で「111M」という事になりますね。
さらに模様を合わせる為のリピート率や室内の出っこみ引っ込み(入隅や出隅)等で、材料には捨てる部分が発生するので、その係数を仮に「1.2」だとして、実際に必要なクロス材の長さを「111M×1.2」で「133M」としましょう。
その数量に材料単価を掛けます。
例えば原価300円/Mだとしたら、「300円×133M」で「39,900円」が材料代という事です。
これを対象の施工数量「100㎡」で割り戻すと、「39,900円÷100㎡」で「399円/㎡」が材料単価という事になります。
材料単価=材料原価÷施工対象の数量
B.施工単価の算出
職人の技能については「人工(にんく)」という単位で計算します。
人工とは「何人で何日かかる仕事量なのか」について計算するものです。
人工と合わせて、歩掛という指標を用いる事で単価を算出します。
例えば1人工が20,000円/日の職人であれば、表記は「20,000円/人工」となります。
次に新築の壁紙クロス貼工の歩掛として「100㎡/人」という実績の職人であれば、1日に1人が施工できる壁紙クロス貼の面積は100㎡という意味になります。
「1人工20,000円÷1日当たりの歩掛100㎡」で、施工単価は「200円/㎡」という計算になります。
施工単価=歩掛人工÷施工対象の数量
見積単価=A.材料単価+B.施工単価
前述までの材料単価と施工単価を合わせると、「材料代399円/㎡+施工費200円/㎡」となるので、この内装屋さんの㎡単価は「599円/㎡」ということ。
さらに、この単価に会社経費(車両代や燃料代、通信費など)や会社の利益をパーセンテージで加算したものが、いわゆる出し値、すなわち見積単価という事になります。
見積単価算出の例「壁紙クロス貼工」
●材料単価 399円/㎡
●施工単価 200円/㎡
●会社経費 175円/㎡(20%)
●見積単価 774円/㎡
- 金額はあくまでも解説のための一例。
本記事の主旨は金額ではなく単価の仕組みについて。
請負契約の見積手法は共通
この「設計数量×単価」という見積金額は、建設業における請負契約の常識です。
注文住宅の見積書では各種様々な工種が羅列されますが、全ては前述した「設計数量×単価」で算出されます。
それは大工工事であっても電気工事であっても、サッシやシステムキッチンの取り付けにおいても同じこと。
つまり、全ての工事・作業には材料と手間があり、見積単価とは材料単価と施工単価を組み合わせて決定される、という訳ですね。
請負契約において見積単価とは、仕入に際する「材料原価」と、歩掛を用いた「施工手間」の合計から成る総額を、設計数量で割り戻すことで表示される。
ただし、どうしても表記すべき数量が見当たらない場合もあります。
その場合はその工事区分について「一式」として表現する事もあります。
「一式」にも意味があって、掛かるであろう時間とか手間、実費などを表す場合が多い。
増額と減額の原理原則
着工前や着工後を問わず、注文住宅に係る要望が変更される場合、図面も変更になる場合があります。
これを「設計変更」と言います。
設計変更があると当然、施工数量が増えたり減ったりするもの。
この時、多少の数量増減であれば、大抵の住宅会社は見積単価の再算出は行わないでしょう。
しかし、著しい数量の増減については見積単価の設計を見直さなくてはなりません。
なぜなら前述の通り単価とは、各種原価を設計数量で割り戻したものだから。
その根底となる数量が大きく変わるのであれば、見積はやり直しとなってしまいます。
数量が大きく減ったら、それまでと同じ単価が適用されるとは限らない!
それは一般に数量は多いほど単価が低くなるから。
これを「スケールメリット」と呼びます。
設計変更により大きく施工対象の数量が減った時、このスケールメリットが減少してしまいます。
対象の施工数量が減れば使う材料が減るので、材料費分については減額に成り得ますが、
歩掛から算出される施工手間については、逆に単価が上がってしまう場合もあるのでご注意!
例えば、トイレの壁紙貼替だけを依頼するより、家全体の壁紙貼替を依頼した方が、スケールメリットで単価は低くなります。
他にも、物品製作をメーカーや工場に依頼する際など、決められた最小ロットを超えて発注数量が多ければ多いほど単価が低くなる、という事と同じ論理と言えます。
注文住宅の契約における最適解は、概算見積の内にプランや仕様についてしっかりと打ち合わせしておく事で、設計変更を極力しない事だと言えます。
まとめ:見積単価の仕組みを理解した家づくりの方が良い!
見積単価の仕組みが理解できれば、見積書全体についての理解も深まります。
見積書全体の理解が深まれば、より慎重に注文住宅を検討することも可能!
この記事が、失敗しない注文住宅を目指す皆さんの『施主力アップ』につながってくれれば幸いです。
- 住宅会社は建設業である
- 建設業は請負契約を行なう
- 請負契約の見積単価は材料費と歩掛で構成される
『家づくりノート』を作ろう!
家づくりは長期戦!
まずはスロースタートで、じっくり検討する期間が大切です。
『家づくりノート』を作れば、
家族でイメージを共有しながら打ち合わせを進めることが可能!
- 要望や方向性の整理
- 資金計画
- 住宅会社選び
- 土地探し
- 間取り・仕様の比較検討
- 家づくりの希望条件、考え方を整理
- 家族で住まい方のイメージを共有
- 日程や期日など共有スケジュールを確認
- 住宅会社へ明確に伝えやすいくなる
▼家づくりノートの作り方をとことん解説!
それではぜひ、楽しいライフスタイルを !
To Be Continued …