家づくりの検討では「平屋もありか!?」と思うことがあります。
しかし平屋の家づくりは難易度が少し高め。
二階建て住宅と決定的に異なるのが、土地を抜きに間取りの検討が難しいという点。
それは平屋の家づくりが、対象となる敷地面積の広さや形状に大きく影響を受けるからです。
では、ハウスメーカーや不動産屋に土地探しの相談をしてからじゃないと何も始められないのか、というとそういう訳でもありません。
むしろ、住宅会社に相談する前に平屋について知っておいた方が良いこと、たくさんあります!
この記事では、平屋の家づくりで失敗しない為に必要な5つのアプローチについて詳しく解説!
この記事を読むことで、誰でも平屋の家づくりに有効な手法を知ることができます。
- 必要な土地面積の求め方
- 最適な敷地環境の選び方
- 割高な建築費用の捉え方
- 採光ある間取りの作り方
- 得られる暮らしの在り方
今、家づくりは平屋から考えてみるという人が増えている
平屋はそのゆったりとした佇まいで多くの人を惹きつけ、注文住宅の市場で特に最近、大きな注目を集めています。
平屋が魅力的に映るのは、平屋での家づくりを成功させた人たちの影響もあります。
魅力あふれる平屋
平屋と言えば「和」をイメージする人も多いかも知れません。
そんな中で最近は和風モダンをお洒落に楽しむ人や、アメリカンなカバードポーチを満喫する人など、平屋のイメージや住まい方も実に多様化。
いずれ、平屋の家づくりを成功させた人たちに共通しているのは「平屋を外観から楽しんでいる」という点です。
お家の中は一体どんな間取りになっているのかワクワクしますよね。
平屋の家づくりでは外観と同時に、エクステリアにもこだわりを持った人が多い印象です。
そこには玄関アプローチや庭の演出など、建物と一体感のある魅力的な家づくりがあります。
通常の家づくりでは「建物は建物、庭は庭」で別々に検討する場面も多いのですが、平屋での家づくりはその全てが理想の暮らしからの逆算。
先人たちの経験やアイディアは是非、参考にしたいですね。
平屋の需要が伸びている背景
国土交通省の「建築着工統計調査」によると、一戸建て住宅の新築着工棟数に占める平屋の割合は2010年の6.2%から、2020年には11.2%まで増加。
同じ敷地面積であれば、二階建ての方が延べ床面積の広い家を建てることが出来るにも関わらず、10人に1人は平屋を選択している時代です。
- 平屋は見た目も生活もオシャレ!
- モノを多く持たない価値観の広がり
- 階段が無く平面的で暮らしやすい
- 地震で揺れにくく倒壊しにくい安心感
特に昨今、若い世代を中心に「平屋はオシャレ」という認識が広がっているようです。
そして、核家族化の進行やモノを多く持たない価値観の広がりなどを背景に、広い居住面積にそこまで魅力を感じない人が増えたのも事実。
また、平面的で階段のない暮らしやすさは平屋の醍醐味でもあり、その需要を支える根源です。
さらに近年は地震で倒壊しにくいイメージが新たに付与され、永く住まう住宅としての安心感と安定感に魅力を感じる人が増えました。
この流れを受けてハウスメーカー各社が魅力的な平屋プランを展開中!
平屋の家づくり&住まい方を選択するメリット7つ!
二階建て住宅と比べた平屋のメリットはいくつかありますが、特に印象的なのが次の7つ。
- 間取りや構造で上階との整合性に悩まない
- 暮らしの動線を平面的に導き出しやすい
- 家族のコミュニケーションが取りやすい
- 上階への階段スペースや費用が不要
- メンテナンス費用(特に足場)を低減
- 子供や高齢者にも日常生活が安全で楽
- 住宅会社の個別に構造上の優位性がない
二階建ての検討では柱や壁の位置、耐荷重をクリアする構造に配慮したり、二階にトイレを設けるために水回りの効率化に苦慮する場面もありますが、平屋ならもっと自由な間取りが可能。
庭までを含めた、住み心地の良い平面的な生活動線を描きやすいのが特徴です。
また階段スペースも不要であったり、経年劣化に対するメンテナンスがし易かったりと、総合的に経済面で良い影響も考えられます。
さらにバリアフリーに対応しやすい点が、小さな子供にも自分が高齢になった後も安心して永く住まえる場所として、住宅の価値観を高めてくれるでしょう。
そして最も特筆すべき点が、大手ハウスメーカーであろうと地元中小工務店であろうと、平屋住宅では耐震性能を謳う特殊な構造を売りにする優位性がほとんど無いということ。
住宅会社としては、ほぼ提案力だけの真っ向勝負!
平屋の家づくり・住まい方を選択するデメリット4つ!
二階建て住宅と比べた平屋のデメリットについて、主な4つを知っておきましょう。
- 土地面積にゆとりある広さが必要
- 建物の坪単価としては高くなりがち
- 陽当たりや風通しに注意が必要
- プライバシーや防犯面で工夫が必要
平屋住宅では、通常の二階建て住宅に相当する居室をすべて1階に配置するので、どうしても敷地面積にはゆとりが必要になります。
また天井上部がそのまま屋根となるため、二階建て住宅の様に一階天井と二階床を組み合わせる事が出来ず、延床面積で換算する坪単価が高くなってしまうのは仕方がないところ。
さらに居室が平面的に広がる間取りなので、ちゃんと計画しないと建物の中央付近が薄暗くなったり湿気がこもりやすくなります。
そして居室が1階に集中するため、窓から外の視線を気にして塀やフェンスで囲んだりするものの、逆に見通しの悪い死角が出来ることも多く、防犯上の対策は必須。
平屋の家づくりで絶対に知っておきたい5つのアプローチ!
- 必要な土地面積の求め方
- 最適な敷地環境の選び方
- 割高な建築費用の捉え方
- 採光ある間取りの作り方
- 得られる暮らしの在り方
①必要な敷地面積の求め方
家づくりでは理想の間取りを描く前に、まずは大まかな範囲で必要な敷地面積を知っておくことが重要です。
特に平屋の場合、理想の間取りが先にあってはそれに見合う土地を探すことがとても困難。
それは、本来必要な部屋を2階へ分散できるにも関わらず、わざわざ全てを1階に配置する訳ですから、それ相応の敷地面積が必要となるからです。
必要となる敷地面積が大きくなればなるほど、土地取得にかかる費用が上がってしまうのは当然のこと。
予算オーバーを避ける為には、一体どうやって敷地面積に目ぼしを付ければ良いのか。
たとえば以下の例は、希望の合計面積をざっくりと算出し、次に必要となる敷地面積を模索する手法です。
部 位 | 面 積 |
---|---|
玄関・廊下 | 14.0帖:7.0坪:23.1㎡ |
LDK | 18.0帖:9.0坪:29.7㎡ |
主寝室 | 10.0帖:5.0坪:16.5㎡ |
洋室①② | 10.5帖:5.2坪:17.3㎡ |
浴室・洗面・WC | 3.5帖:1.75坪:5.7㎡ |
希望の合計面積 | 56.0帖:28坪:92.4㎡ |
- 2.0帖=1.0坪=3.3㎡
建ぺい率 | 必要な敷地面積 |
---|---|
30%の場合 | 93.3坪(308.0㎡) |
40%の場合 | 70.0坪(231.0㎡) |
50%の場合 | 56.0坪(184.8㎡) |
60%の場合 | 46.6坪(154.0㎡) |
70%の場合 | 40.0坪(132.0㎡) |
80%の場合 | 35.0坪(115.5㎡) |
- 必要な敷地面積=希望の合計面積÷建ぺい率
建ぺい率とはその地域毎に定められたものであり、投影面積がその対象となります。
投影面積とは建物を真上から見下ろした時に、外周の柱の中心点を結んだ面積。
「この土地に建てる事が出来る投影面積は、敷地面積の〇%までよ!」という意味です。
必要な敷地面積が広くなるほど、土地の購入に予算がかかる
ギリギリの敷地面積では、平屋を建てるメリットが小さくなる
したがって理想の間取りを出来るだけコンパクトにまとめ、敷地面積には少し余裕を持った土地探しがベターです。
この両面からのアプローチが平屋の家づくりではかなり重要!
②最適な敷地環境の選び方
せっかく理想の平屋を建てたのに、後から隣地に背の高い建物が建ってしまっては少し残念な気持ちになってしまいます。
こうならない為にも、自分がどんな用途地域に建てるのかを知っておくことが重要。
用途地域とは都市計画法によって市街化区域に定められる地区地域の要件を指し、全部で13種類あります。
- 第一種低層住居専用地域
- 第二種低層住居専用地域
- 田園住居地域
商業施設や工場を建設できる地域もそれぞれここで区分されます。
その中で戸建住宅、特に平屋住宅に適している用途地域が「第一種低層住居専用地域」「第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」の3つ。
これらは高さ制限や隣地境界線、容積率や建ぺい率といった規制が最も厳しく規定されています。
用途地域 | 建ぺい率(%) | 容積率(%) |
---|---|---|
第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 田園住居地域 | 30 , 40 , 50 , 60 | 50 , 60 , 80 , 100 , 150 , 200 |
建ぺい率の規制緩和について.
以下の場合、建ぺい率がそれぞれ「10%」緩和。
①特定行政庁が指定した角地
②防火地域において耐火構造、又は準防火地域における準耐火以上の構造
条件が整えさえすれば、第一種低層住居専用地域でも建ぺい率80%で建築する事が可能になりますが、それだけ敷地に目いっぱいで建てたとしても、平屋としての魅力を引き出すにはまた別の配慮も検討。
自分が建てられる条件は、近隣にも後から建てられる可能性があると認識すべき。
③割高な建築費用の捉え方
平屋の家づくりは延床面積で換算する坪単価で考えると、とっても割高です。
なぜならスケールメリットが少ないから。
それは、二階建て住宅では1階居室の上部に2階居室を設けることが出来ても、平屋住宅では全ての居室の上部が屋根になるという大きな違いです。
ただし注意が必要なのは、坪単価はあくまでも目安でしかない!という点。
二階建て住宅も平屋住宅も、家づくりはいつも『総額』で考えなければなりません。
大手ハウスメーカー:工事総額約2,550~3,300万円(坪単価85万円~)
地域密着の住宅会社:工事総額約1,600~2,300万円(坪単価55万円~)
※あくまで目安。建物の間取りや仕様、形状で変化。
坪単価は「掛かった工事総額 ÷ 建坪」という解釈であり、「坪単価 × 欲しい建坪=工事総額の予算」という訳ではありません。
あくまで概算として見立てる大枠として「大体このくらいの予算は最低限必要かぁ」という程度。
そこから個別の要望やプラン、間取りや仕様によっていくらでも坪単価は変化します。
なぜなら坪単価は本来、住宅を建て終わった後の「結果」でしかないから。
イメージ的には野球の「打率」や「防御率」と一緒。
④採光ある間取りの作り方
平屋はワンフロアに居室を配置するので、間取り中心部は窓のある外壁までの距離が遠くなるため、何もしないと薄暗くなってしまいます。
これを解消する為に有効な手段が壁上部に取り付ける窓や天井付近のトップライト。
平面的なイメージの強い平屋にあって立面・断面までしっかりとした設計が必要になるので、住宅会社の選定には十分時間をかけたいところです。
あるいは建物形状をL字型やコの字型にして、中庭を上手く取り入れる手法も有効。
そこで注意したいのが検討する順序です。
まず初めに”欲しい暮らしの動線から導き出された理想の間取り”があって、それに対して採光や風通しを考えた時に様々な手法をもって対応する、という流れ。
外観ありきで着手すると、無駄な費用や無用の空間が出来るので注意!
⑤得られる暮らしの在り方
住み心地のいい暮らしとして、ワンフロアの平屋はとても優れた住まいですが、それでも感じるメリットやデメリットは人それぞれです。
ここで、それらを超越して平屋に住まえるのかを再確認しておきましょう!
強い日差しを遮り、風の通り抜けを感じる
平屋は元から耐震性が高いので大きな窓が設けやすく、2階が無いため天窓も付けやすいので、自然の採光や風の通り抜けを満喫する事が出来ます。
また、平屋の生活を楽しむためには、庇(ひさし)は大きめに作りましょう。
そうする事で冷暖房に依存しすぎない心地良さが楽しめます。
★庇と日差しの関係についてはコチラの記事でも解説!
内外の一体感を高める暮らしを問う
せっかくの平屋であれば、部屋も庭も連続性のあるひと続きが理想です。
ちょっと大切に育てたい花も、お茶をするだけのアウトドアリビングも、住まう家族の交流の場として大事にしたい庭への行ったり来たり。
各部屋からの生活動線が交わる場所にコモンスペース(共有部分)を設けて出入りするのも良いし、個室やキッチン、ガレージなどからダイレクトに行き来するのも楽しいです。
洗濯物は庭に干すに決まってる
天気の良い日は、1階の洗濯機を回して2階ベランダへ干しに行くなんて選択肢はなく、平屋のお家ではもちろん庭に干します。
階段を上り下りする手間もないので家事動線としても有用。
空からそのまんまの日差しと心地よい風があれば、洗濯物も暮らしも活き活きしますね!
暮らしのすべてを愛でる平屋生活
平屋の家は二階建て住宅に比べて掃除がし易いと思われがちです。
それは階段が無かったり、個室の仕切りが少なかったりというだけであって、実態は少し違う。
平屋の家では掃除はし易くても、掃除の頻度は多くなるよ、というお話。
なぜなら、住宅内外の出入りや各部屋の行き来など暮らしの全てが1階に集約されているので、平屋の醍醐味である開放感ある間取りの特性上、どうしても掃除は頻繁に必要になります。
掃除がしやすいのは事実なので、あまり手間に感じないかも♪
まとめ:平屋の家づくりで失敗しない為に必要な5つのアプローチ!
平屋の家づくりは通常の家づくりの中でもさらに難易度が高いです。
失敗しない方法とは何をもって失敗とするかにも依りますが、少なくとも後から知って「もっとこうすれば良かった」とか、「こんなハズじゃなかった」という想いは回避したいところ。
- 必要な土地面積の求め方
- 最適な敷地環境の選び方
- 割高な建築費用の捉え方
- 採光ある間取りの作り方
- 得られる暮らしの在り方
オーソドックスな二階建て住宅であれば、理想の間取りに合った土地もオーソドックスに探せますが、平屋の家づくりではそうも簡単にいかないので注意が必要。
ロケーションに影響を大きく受けるであろう平屋の家づくりでは、土地も一緒に検討することで、失敗しない家づくりへと近づくことが出来ます。
『家づくりノート』を作ろう!
家づくりは長期戦!
まずはスロースタートで、じっくり検討する期間が大切です。
『家づくりノート』を作れば、
家族でイメージを共有しながら打ち合わせを進めることが可能!
- 要望や方向性の整理
- 資金計画
- 住宅会社選び
- 土地探し
- 間取り・仕様の比較検討
- 家づくりの希望条件、考え方を整理
- 家族で住まい方のイメージを共有
- 日程や期日など共有スケジュールを確認
- 住宅会社へ明確に伝えやすいくなる
▼家づくりノートの作り方をとことん解説!
それではぜひ、楽しいライフスタイルを !
To Be Continued …